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 七五三シーズンですね! この季節、休日に神社を覗くと可愛らしい和服姿の子どもたちが千歳飴を持ってご家族と歩いている姿が目につきます。あどけない三歳の被布姿も、きりりと決まった五歳の袴姿も、可愛いけれどお姉さんな七歳の四つ身姿も微笑ましく、すくすく大きく育って‥‥と、他人なのにおばちゃんの涙腺は緩むのでした(阿呆)。

 さて、七歳の女の子のお祝いは「帯解き(おびとき)」という、子どもの着物の付け紐を取って、初めて帯を結ぶ人生の通過儀礼。着物も四つ身という大人とほぼ同じ作りのものになります。また帯の下には、しごき帯を結びます。

 その四つ身を着たときに胸に入れている、房やびらびらがついてる小さな箱のようなものが、筥迫(はこせこ)。気になりませんか? 白無垢や打掛の花嫁さんも懐中に入れていますよね。あの中には一体なにが入っているのかな〜と思ったことはありませんか?

 筥迫は、江戸時代の大奥や武家の女性が、打掛を着た時に懐中に入れた紙入れの一種。お金や守り札、紅板(口紅)なども入れたりしたようです。贅を競って、華やかなものを正装の時に身につけて、今で言うならパーティのクラッチバックのような感覚だったのでしょうか。サイズも現代に見られるものより大振りでした。

 それが明治に入り、庶民も身につけられるようになって、サイズも小さくなり、装飾要素だけが残りました。現代では、七五三や成人式等のお祝いと婚礼の時に、飾りとして残っています。

 筥迫のパーツを見てみましょう。

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(わにコレ(笑)より、花嫁さんの筥迫)

 まずは筥迫本体。外側は錦の艶やかな布が使ってあるものや、豪華な刺繍を施してあるものなど、とにかく華やかです。

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 中をあけてみると、紙を挟めるようになっていて、鏡がついているものが多いです。「はこせこ」と言っても、箱になっているわけではないのですね〜。

 それを開かないようにまんなかで留めているのが「胴締め」。

 胴締めには、胴締めを締める紐がついていて、その先にぶら下がっているのが「落とし巾着」。匂い袋やお守りが入っているのですが、これは帯にはさんで筥迫が落ちないようにストッパーになる役割のものです。よくこの袋が可愛いので外にぶら下がっているのを見かけますが、帯の中に仕舞うのが本来の使い方です。

 そして、飾り房。筥迫の上部、胴締めに差し込みます。赤いもの、白いもの、ハーフ(笑)、金、撚り房のもの、切り房のもの‥‥。これが胸元からこぼれて揺れると、うっとりしますね〜(ええ?私だけ?)

 この飾り房と同じところに、ビラ簪(かん)という銀のびらびらがついているかんざしを飾りとして差し込むこともあります。

 七五三の筥迫は、可愛らしい色もいっぱいありますね。帯締めや草履、扇子やビラ簪、バッグなどとセットでトータルコーディネートのものなど、見ているだけで頬が緩みます。

 花嫁さんの筥迫は、懐剣や抱え帯、扇子などとセットになっていて、これまた凛とした美しさがあります。

 成人式や十三参りではほとんどつけることはありませんが、扇子などと共に、身につけてもおかしくない小物だと思います。

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 以前取材で、この筥迫を研究している「筥迫工房」の山崎さんにお話を伺ったのですが、お嬢さんの七五三のときに自分で作ってあげたいと思ったことが自作のきっかけだったとか。

 山崎さんの筥迫作りワークショップは大人気で、自分の結婚式に自作をしたいという方はもちろん、七五三や十三参り、成人式やお嫁にいくお嬢さん・お孫さんに作ってあげたいという方も多いそう。自作の筥迫にお守りやお手紙、大切なものを入れて、お祝いの正装の胸元に忍ばせるなんて、素敵〜〜〜〜!!! これは大切な記念の品になりますよね。

 番外編ですが、自分の楽しみのために作っても。お遊びで普段着に薄いタイプのもの、小さなものを作って、名刺入れやプリペイドカードなどを入れておくのも楽しいです。布で出来た名刺入れに房をつけるだけでもなんちゃって筥迫気分を味わえちゃいます。胸元にカード入れが入っていると、結構便利ですよ! 房がついていると取り出しもしやすいです。お茶のときの、お懐紙や帛紗を入れている感覚に近いかも?

 小さな箱形に細かく細工をしてある筥迫は、日本人の美意識をぎゅっと封じ込めたかのよう。七五三のとき「開けてはいけない」と言われた記憶がある方も多いのでは。小さな美しい筥迫の宇宙を覗いてみませんか。