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 やっと袷に袖を通してもいいな〜と思える気温になってきましたね。やっぱり袷の心地好い重みといいましょうか、を感じると、「着物を着ているな〜」という喜びというかワクワク感が沸き上がります。

 先週補整をすると着付がラクですよ〜と言いましたがもうひとつ。姿勢と所作で着物姿がぐんとかわります!というお話です。着物にあった動作をすると、着崩れ方も違ってくるなと日々実感しております。

 中学生のころお茶を習い始めたときに、何故こんな動作をするのか?というのがよくわかりませんでした。畳を何歩で歩くとか、建水をひくとか、肘を張るとか、そういった動作が、着物を着た時にはじめてピタッとはまって「あっ」と思ったものです。着物を着ている前提での動きだから、洋服での動きとは違うのですよね。

 でも、実際着物で動いてみないとわからないこともいっぱい。洋服のときは一度も邪魔に思ったことのないドアノブが、着物を着ると袖にひっかかってものすごく邪魔になるとか。腕をバーンと上にあげるとテキメンに着崩れちゃうとか。

 着物だからってそんなに楚々とばかり動くわけにもいかないし、なんだってできることはできるんですが、洋服の時とはちょっと違う動きを意識すると、いいのだと思います。

 そうはいっても、日本人の体型もかわってきているし‥‥と思っていたのですが、着物をきこなすのは体型じゃなくて姿勢と所作だ!と思い知ったのはアメリカ人の俳優さんのポスター撮影を行ったときのことです。
 
 写真撮影のお手伝いしたのは、10月21日に行われる国際京都学シンポジウム「テレビドラマの外国語~京都育ちアメリカ人の役者人生~」。

大河ドラマ「西郷どん」や正露丸CMにも出演されている京都育ちのバイリンガル俳優ブレイク・クロフォードさんは日本語ペラペラ。だけど見た目は完全にアメリカ人なので、ドラマ出演の際にはわざとヘタクソな日本語をしゃべることもある? ドラマの台詞や演出を通して考える、英語と日本語のコミュニケーションについてのお話です。そんなシンポジウム用のポスター用にスーツと浴衣姿で撮影をしたのですが‥‥。

 背が高くて足が長くて胸板も厚い西洋人体型ですから、もちろんスーツの似合うことこの上なし。やっぱり日本人のスーツ姿と全然違うわ〜なんて思っていたのですが、浴衣に着替えていただいたら、あれっ!これまた似合うのなんのって。イケメンに限る、っていうだけじゃなくて、浴衣のときの所作とポーズが、スーツのときと違って重心が低いというか、腰が決まってるんですよね。

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 うかがってみると、クロフォードさんは若い頃歌舞伎をされていて、京都南座でも働いていらしたんだとか。そんじょそこらの日本人よりずっとずっと着物姿が板についているのも納得でした。もちろん着替えもご自分で「ずいぶん久しぶりに着るから〜」とおっしゃってましたがササッと着られて、これまたかっこいい〜!

 着物が板についてるかついてないかって、どこの国の人だからじゃなくて、着た回数なんだなと。民族衣裳だから、わたしたち日本人に似合うけれども、それと「着こなし」は別ものなんだなと。

 スーツの時とスイッチを切り替えて、つぎつぎと着物姿がカッコよく見えるポージングをカメラのまえで繰り出すクロフォードさんに、仕事を忘れかけてキャーキャー言ってしまったワタシたちでした(笑)。シンポジウムは当日参加もOKだそうなので、興味のある方はぜひおでかけ下さい!

 着物を着たら背筋を伸ばして、そういわれると胸を張る人が多いのですが、私はむしろ「腰を立てる」ではないかと思っています。帯を締めると洋服のように腰を曲げて猫背で座るようなことはできません。クっと腰を立てると背筋もしゃんとします。あとはスマホを見るような前肩をストン、と後ろに流すとムリに胸を張らなくても流れるような綺麗な姿勢になります。胸を張ると肩もいかってしまうので、ちょっと違う気がするのですよね。

 まあ、急に着物が板についたり、着こなしがアップするということはないわけで、私もまだまだ全然なんですが、着物を着る回数を重ねるのと同時に「こう動いたらキレイ」とか「こう動いたらラク」ということを意識するとよいのだろうなと思います。

 立ち方座り方‥‥時代劇や日本舞踊など、写真だけではわからない、実際動いている着物姿の動画を見てイメトレをするのもひとつです。なんでも型を真似することから。洋服のときとはちょっと違った「着物の所作」を意識してスイッチを切り替えれば、着姿もぐんとアップすること間違いなしですよ〜!